
作業環境測定の目的
作業環境測定は、有害な業務を行う作業場所について、その空気環境を正確に把握し、労働者の健康を確保するうえで適切な作業環境を確保するために行うものです。
作業環境測定の対象
作業環境の測定を行うべき作業場 | 測定項目など | ||||
作業場の種類 | 関係法令 | 測定の種類 | 測定回数 | 記録の保存年限 | |
土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉塵を著しく発散する屋内作業場 | 粉じん測定25条、26条 | 空気中の粉塵濃度 | 6月以内ごとに1回 | 7 | |
暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場 | 安衛則587条、607条 | 気温、湿度、ふく射熱 | 半月以内ごとに1回 | 3 | |
著しい騒音を発する屋内作業場 | 安衛則588条、590条、591条 | 等価騒音レベル | 6月以内ごとに1回 | 3 | |
坑内の作業場 1.炭酸ガスが停滞し、または停滞するおそれのある作業場 | 安衛則589条、592条 | CO2の濃度 | 1月以内ごとに1回 | 3 | |
気温が28℃を超え、または超えるおそれのある作業場 | 589条、612条 | 気温 | 半月以内ごとに1回 | 3 | |
通気設備が設けられている作業場 | 589条、603条 | 通気量 | 半月以内ごとに1回 | 3 | |
中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの | 事務所則7条 | CO及びCO2の含入率、室温、外気温、相対湿度 | 2月以内ごとに1回 | 3 | |
放射線業務を行う作業場 1.放射線業務を行う管理区域 | 電離則53条、54条 | 外部放射熱による線量当量率 | 1月以内ごとに1回 | 5 | |
2.放射性物質取扱作業室 3.坑内における核原料物質の掘採の業務を行う作業場 | 電離則53条、55条 | 空気中の放射性物質の濃度 | 1月以内ごとに1回 | 5 | |
特定化学物質もしくは石綿及びその含有する製剤などを製造し、または取扱う屋内作業場 | 特化則36条 石綿則36条 | 第1類又は第2類物質もしくは石綿の空気中の濃度 | 6月以内ごとに1回 | 3 | |
一定の鉛業務を行う作業場 | 鉛則52条 | 空気中の鉛の濃度 | 1年以内ごとに1回 | 3 | |
酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場 | 酸欠則3条 | 空気中の酸素の濃度、硫化水素の濃度 | 作業開始前ごと | 3 | |
有機溶剤を製造し、又は取扱う屋内作業場 | 有機則28条 | 有機溶剤の空気中の濃度 | 6月以内ごとに1回 | 3 |
作業環境測定士が測定すべき対象作業場所
作業環境測定士の資格者が測定しないといけない作業場所は以下のとおりです。
- 土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉塵を著しく発散する屋内作業場
- 放射性物質取扱作業室および事故由来廃棄物など取扱施設
- 特定化学物質を製造し、もしくは取扱う屋内作業場
- 一定の鉛業務を行う屋内作業場
- 一定の有機溶剤業務を行う屋内作業場
作業環境測定基準

作業環境測定は労働者の働いている環境を的確に把握し、結果に基づいて設備の改善などを実施するものですので、その測定結果は、作業場所の実際を正確に反映したものでないといけません。
同一の作業環境条件であれば、いつ、だれが、どこで実施しても同じ測定結果が得られるように、有害要因ごとに最低限の測定基準(=作業環境測定基準)が設けられています。
作業環境測定基準は、おおよそ次のような内容が決められています。
- 単位作業場所の設定方法
- 測定点の設定方法
- サンプリング時刻及サンプリング時間の選定方法
- サンプリング方法
- 分析方法
単位作業場所の設定方法
単位作業場所とは、建築物の単位や作業場所の区分ではなく、空気中の有害物の濃度が、その場所に働く労働者の平均のばく露量推定の根拠となりうるような範囲です。
そのため、空気中の有害物の濃度にバラツキのある場合や、特定の場所のみ濃度が高いおそれのある場合は、単位作業場所を分けて設定するのが良いでしょう。
測定点の設定方法
測定には、A測定とB測定の2種類の測定があります。
A測定は単位作業場所の平均的な有害物濃度を把握するもので、B測定は A測定のみでは見逃すおそれのある局部的又は短時間にみられる高濃度の状態をみつけるためのものです。
A測定について
A測定では単位作業場所の環境を可能な限り忠実に測定結果に反映させることが重要です。
そのためには、少なくとも5点以上の測定点を単位作業場所の範囲内でランダムになるように選びます。
とはいえ、ランダムに選べと言われても、どこを測定点にしていいかわかりませんよね。
実際には、単位作業場所の図面上で任意の点を原点として縦横にそれぞれ6m以下の等間隔の平行線を引き、平行線の交点をすべて測定点とします。

单位作業場所の状況は個々に異なるため、測定結果に環境の状態をよりよく反映させるため、必要に応じ以下のような修正を行います。
- 装置などと重なり、その点に労働者が立ち入ることが考えられないような測定点は測定対象から外します。
- 単位作業場所の範囲が広く、測定点の数が非常に多くなる場合で、 有害物質の気中濃度がほぼ均一であることが明らかであるときは、 6mの間隔を適当に広げても問題ありません。この場合でも縦方向又は横方向の平行線の間隔は一定とします。
- 縦の線の間隔と横の線の間隔とは、必ずしも同一である必要はありません。 ただし、縦方向及び横方向のそれぞれの間隔は同一としなければなりません。
- 単位作業場所が著しく狭い場合であって、有害物質の濃度がほぼ均一であることが明らかなときは、測定点は、5未満とすることができます。その場合、同一測定点において繰返し測定を行うことによって、測定値の総数を5以上としてください。
- 最初のサンプリング開始から最後のサンプリング終了までの時間は1時間以上としてください
B測定について
局所的に高濃度の場所があったり、短時間に多量の有害物が放出されている場合、B測定を行う必要があります。
B測定を行うのは、次のような場合です。
- 有害物の発生を伴う作業であって、単位作業場所の中で作業者が発生源とともに移動しながら行う作業がある場合
- 単位作業場所の中で有害物の発散を伴うような原材料などの投入作業や点検作業などが間欠的に行われる場合
- 有害物を発散する可能性のある装置、設備などの近くで、固定して行う作業がある場合又は有害物の発散を伴う作業を作業者の近くで固定して行う場合
B測定を行う場合、単位作業場所の範囲内で、最も有害物の濃度が高くなると考えられる点を測定点として選びましょう。
濃度が高くなると予想される場所がいくつかある場合は、複数のB測定点を選んでも問題ありません。
この場合には、B測定点で得られた測定値のうちの最も高い値をB測定値となります。
B測定点におけるB測定の結果はA測定で得られた測定値のうちの最高濃度より低くなることもあり得ます。
サンプリング時刻及びサンプリング時間の選定方法
サンプリング時刻
休憩時、装置の稼動休止時などを除き、正常な作業が行われている時間帯に行い、原則として、始動後1時間以内は避けましょう。
なお、日測定は単位作業場所内の生産の工程、作業態様及び有害物の発散状況などから判断して、当該有害物の気中濃度が最大になると考えられる時間に実施しましょう。
サンプリング時間
1測定点において10分間以上サンプリングを行いましょう。
また、A測定では、単位作業場所でのサンプリング開始から、全測定点のサンプリング終了までの時間が1時間以上となるようにしてください。
管理区分の決定
サンプリング実施後は、「作業環境評価基準」に基づき、有害物ごとに定められた分析方法により空気中の濃度を推定していきます。
作業環境測定の結果としては、サンプリングで得られた「空気中の有害物濃度」と「管理濃度」の比較によって、第1・第2・第3管理区分のいずれかに分類されます。
管理区分の決め方は下の表の通りです。
A測定のみを実施した場合
A測定 | ||
第1評価値<管理濃度 | 第2評価値≦管理濃度≦第1評価値 | 第2評価値>管理濃度 |
第1管理区分 | 第2管理区分 | 第3管理区分 |
A測定とB測定を実施した場合
A測定 | ||||
第1評価値<管理濃度 | 第2評価値≦管理濃度≦第1評価値 | 第2評価値>管理濃度 | ||
B測定 | B測定値<管理濃度 | 第1管理区分 | 第2管理区分 | 第3管理区分 |
管理濃度≦B測定値≦管理濃度×1.5 | 第2管理区分 | 第2管理区分 | 第3管理区分 | |
B測定値>管理濃度×1.5 | 第3管理区分 | 第3管理区分 | 第3管理区分 |
管理区分と対応について
管理区分は、測定を行った単位作業場所の作業環境が良好なのか、改善する余地があるかの指標になります。
管理区分には、第1管理区分、第2管理区分、第3管理区分があります。
それぞれの意味合いは以下の通りです。
- 第1管理区分:作業環境が良好に管理されており、特に問題がない状態です。
- 第2管理区分:作業環境に改善の余地がある状態です。法律では、作業環境を改善するよう努めることとなっています。
- 第3管理区分:作業環境が適切ではない状態です。作業環境を改善し、第2管理区分以下とする必要があります。