安全衛生の保護メガネの選び方と使用方法(皮膚等障害性化学物質の内容を含む)

作業環境における目の保護は、従業員の安全を守るために欠かせない重要な要素です。特に工場や建設現場、研究施設などでは、目に危険を及ぼすさまざまな要因が存在します。そのため、適切な保護メガネを選ぶことは、作業者の安全を確保するための基本的な対策と言えます。

本記事では、保護メガネの種類から選び方、遮光メガネやレーザー光用メガネの選定基準、規格について詳しく解説し、安全かつ効果的に目を守る方法を紹介します。

保護メガネの種類

保護メガネとは、作業中の飛来物、粉じん、薬品、光線などから目を守るために使用される個人用保護具のひとつです。使用目的やリスクに応じてさまざまなタイプが存在し、選択を誤ると目の損傷につながるおそれがあります。

保護メガネには大きく分けて以下の種類があります。

  • 一般的な保護メガネ(セーフティグラス)
     側面を含めた全体を覆うような構造で、粉じんや飛来物に対して広範囲に目を守ります。
  • ゴーグルタイプ
     顔に密着し、液体の飛散やガス、細かな粉じんにも対応できます。化学薬品や感染症対策としても使用されます。
  • オーバーグラス
     度付き眼鏡の上から装着できるタイプで、視力補正と目の保護を両立させたい人に向いています。
  • 遮光メガネ
     溶接など強い光が発生する作業で使用されるメガネで、紫外線や赤外線を遮断する機能を持ちます。
  • レーザー保護メガネ
     特定波長のレーザー光線を遮断するために設計されたメガネで、医療・研究・製造現場で使用されます。

保護メガネを使う環境

保護メガネは、以下のような環境での使用が想定されています。

  • 建設現場や工場
     金属や木材の切断、溶接作業では、飛び散る火花や破片が目に入るリスクがあります。
  • 化学実験室・製薬工場
     化学薬品やガスの飛散により、目を損傷するおそれがあるため、密閉性の高いゴーグル型が求められます。
  • 粉じん作業(石材加工、サンドブラストなど)
     粒子が目に入るリスクが高く、保護メガネの着用が必須となります。
  • 医療・バイオ系の現場
     感染症のリスクがある現場では、飛沫から目を守るゴーグルやフェイスシールドの使用が推奨されます。
  • 高輝度光線を扱う現場(レーザー、溶接など)
     目に見えない赤外線や紫外線が網膜や角膜を損傷する可能性があるため、光学的に適切な保護具が求められます。

保護メガネの選択

保護メガネを選ぶ際には、次のようなポイントに注意しましょう。

  • リスクの種類を把握する
     飛来物、粉じん、化学薬品、光線など、どのような危険要素があるのかを明確にすることが第一です。
  • 作業の種類・頻度
     一時的に使用するのか、長時間着用が必要なのかによって、装着感や視認性なども選定基準となります。
  • 眼鏡使用者への配慮
     度付き眼鏡を使用している場合は、オーバーグラスや度付き保護メガネが必要です。
  • 快適性・フィット感
     長時間着用する場合は、軽量で曇りにくい、調整可能なタイプがおすすめです。

皮膚等障害性物質を取扱う場合

皮膚等障害性化学物質とは、皮膚や眼、粘膜などに接触した際に刺激や腐食、アレルギー反応、重篤な組織損傷を引き起こす恐れのある物質を指します。

2023年(令和5年)に労働安全衛生規則が改正され、皮膚等障害性化学物質の取り扱いを行う場合は、適切な保護メガネなどを着用することが義務付けられました。

該当する化学物質の例には以下のようなものがあります。

  • 強酸・強アルカリ(硫酸、苛性ソーダなど)
  • 有機溶剤(トルエン、アセトンなど)
  • 消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム、グルタルアルデヒドなど)
  • 接着剤や樹脂成分(イソシアネート系化合物など)

保護メガネの選定ポイント(皮膚等障害性化学物質の場合)

皮膚等障害性化学物質を扱う場合は、通常のセーフティグラスでは不十分なことがあり、以下の点を考慮して選定する必要があります。

選定ポイント説明
密閉性液体やガスが目に入るのを防ぐため、顔に密着するゴーグルタイプが適しています。
耐薬品性酸・アルカリに対する耐性があるレンズ材質(例:ポリカーボネート)やフレームが必要です。
曇り止め機能密閉型は曇りやすいため、アンチフォグ加工がされた製品を選ぶと快適です。
JIS規格準拠JIS T8141などの保護メガネ規格に適合したものを選び、安全性を担保しましょう。

遮光メガネの選択

遮光メガネは、主に溶接やガス切断など高輝度の光が発生する作業で使用されます。目に見える光だけでなく、紫外線(UV)や赤外線(IR)からも目を保護する必要があります。

選定の際には以下のポイントを確認します。

  • 遮光度の選定
     遮光度(Shade Number)は、ANSI Z87.1やJIS T8141に基づいて規定されており、作業内容に応じた数値を選ぶ必要があります。例えば、アーク溶接には遮光度10以上が必要です。
  • フィルター性能の確認
     紫外線や赤外線をどの程度カットできるかを確認し、適切なフィルターが使用されているかをチェックします。
  • 遮光範囲の広さ
     視界が狭すぎると作業性に影響が出るため、必要に応じてワイドビジョンタイプを選ぶとよいでしょう。

保護メガネ、遮光メガネの規格

日本国内で使用される保護メガネや遮光メガネには、次のような規格が適用されます。

  • JIS T8141:個人用保護具−目を保護する装備品
     耐衝撃性、耐熱性、視認性、紫外線透過率などの基準が定められており、JISマークが表示されます。
  • ANSI Z87.1(米国)
     世界的にも使用される規格であり、特に国際的な取引をしている企業では準拠が求められる場合があります。
  • EN166(欧州)
     ヨーロッパにおける保護眼鏡の統一規格で、工業製品として高い信頼性を持っています。

これらの規格を満たしていない保護メガネは、十分な保護性能がないおそれがあるため注意が必要です。

レーザー光用保護メガネの選択

レーザー光は、可視光だけでなく赤外線・紫外線を含み、非常に強いエネルギーを持つため、目へのダメージが深刻になる可能性があります。

選定にあたっては以下の点が重要です。

  • OD(Optical Density)の確認
     OD値は光をどれだけ減衰させるかを示す値で、ODが高いほど保護能力も高くなります。
  • 波長への対応
     レーザーには特定の波長があるため、使用するレーザーの波長に適した保護メガネを選ばなければ意味がありません。
  • 用途と作業距離
     照射距離や出力によって必要なOD値やレンズの構造が異なります。
  • 規格適合品の確認
     EN207やEN208など、レーザー保護に関する欧州規格の適合品を選ぶと安心です。

顔面保護具の選択

高リスクの作業では、保護メガネ単体では不十分な場合があります。顔面全体を覆うフェイスシールドなどの併用が推奨されることもあります。

  • 飛来物や液体のリスクが高い作業
     粉砕作業や薬品混合などでは、目だけでなく顔全体を守る必要があります。
  • 溶接作業や火花の飛散がある作業
     遮光面と保護メガネを併用することで、より高い安全性を確保できます。
  • 使用感のバランス
     重量や視野の確保など、作業性を損なわない設計かどうかも重要なポイントです。

保護メガネの使用方法

保護メガネは、正しく使用しなければその効果を発揮しません。以下のポイントを守りましょう。

  • 着用前に破損や曇りを確認する
     レンズに傷があったり、歪んでいると視界が悪くなり、事故の原因になります。
  • 正しい位置でフィットさせる
     ずれ落ちたり、隙間ができると保護効果が低下します。調整機能を活用してしっかりと装着しましょう。
  • 定期的なメンテナンスと交換
     使用後は清掃し、保管時は専用ケースなどで保護します。傷や劣化があれば早めに交換を。
  • 教育と指導の実施
     作業者が適切に保護メガネを選び、使用できるように、安全衛生教育の中で具体的に指導を行うことが重要です。

まとめ

保護メガネは「つけているだけ」では意味がなく、「正しく選び、正しく使う」ことで初めて目を守る力を発揮します

現場のリスクに応じた適切な選定と運用、そして規格に基づいた製品の導入が、安全な職場環境づくりの第一歩となります。管理者の皆様には、今一度、現場での使用状況を点検し、必要に応じて改善・教育を進めていくことをおすすめします。

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