【完全解説】ロックアウト・タグアウトとは?安全衛生法107条と過去の労災から学ぶ命を守る仕組み

設備の点検や保守作業中に、機械が誤作動して大事故につながるリスクは常に存在します。そのリスクを未然に防ぐための最重要な安全措置が「ロックアウト・タグアウト(LOTO)」です。安全衛生法第107条では、機械等の修理・掃除などの際には電源を切るなどの措置を取るよう義務付けられていますが、実際の現場では対応が不十分なケースも見られ、過去には重大な労災も発生しています。

本記事では、ロックアウト・タグアウトの基本知識から、安全衛生法107条の内容、実際の労災事例、そして導入・運用のポイントまでをわかりやすく解説します。現場の安全管理者はもちろん、すべての作業者に知ってほしい“命を守る仕組み”を学びましょう。

ロックアウト・タグアウト(LOTO)とは?

ロックアウト・タグアウト(LOTO)とは、機械の点検や清掃、保守などの作業を行う際に、機械の電源や動力源を遮断し、その状態が維持されるよう施錠(ロックアウト)や表示(タグアウト)を行うことで、誤操作や予期せぬ作動を防ぐための安全管理手法です。

  • ロックアウト(Lockout): 主電源のスイッチなどを専用の南京錠などで物理的にロックする
  • タグアウト(Tagout): ロックできない場合などに、注意喚起のタグ(警告札)を取り付ける

作業員が安心して保守や点検を行えるよう、電源の再投入を物理的・視覚的に防ぐのがLOTOの目的です。

安全衛生法107条の概要とその意義

安全衛生法第107条は以下のように規定しています。

「事業者は、労働者に機械等の掃除、注油、修理、点検等の業務を行わせる場合には、機械等が運転しないように、必要な措置を講じなければならない。」

つまり、機械の作業中にそのまま保守や点検をさせるのではなく、確実に“動かないようにする”ための措置が求められています。LOTOはこの義務を確実に履行するための最も有効な手段の一つといえるでしょう。

ここで注意したいのは、条文では主語が「事業主」になっていますので、労働者にLOTOの義務があるわけではなく、「事業主」が労働者にLOTOを行わせる義務があります。

過去に起きた労災事例から見るLOTOの重要性

【事例1】機械の内部点検中に誤って起動され死亡(某製造業・2019年)

作業員がプレス機の内部で清掃作業中、同僚が異常に気付かず起動スイッチを入れたことで挟まれ死亡。原因は、電源遮断措置がなされておらず、LOTOの運用が不徹底だったこと。

【事例2】清掃中にシュレッダーが自動起動し重傷(食品加工業・2022年)

定期清掃の際、内部に手を入れた状態で機械が自動的に起動。動力スイッチは切られていたが、自動制御が残っていたため誤作動。事前のロックアウトと制御回路の遮断がなされていなかった。

ロックアウトとタグアウトの違いと具体例

項目ロックアウトタグアウト
方法鍵やロック装置で物理的に操作不能にするタグや札で注意喚起をする
効果高い(物理的に操作できない)中程度(視覚的な注意喚起)
使用場面鍵を取り付けられる装置鍵をつけられない構造や補助的措置
法的優先順位ロックアウトが推奨されるロック不可の場合にタグアウトで代用

ロックアウトの例

  • ブレーカーに南京錠を取り付ける
  • バルブ操作ハンドルにロックカバーを装着

タグアウトの例

  • 「点検中につき操作禁止」などの札をスイッチに取り付ける
  • 担当者名・作業日時・作業内容を明記したタグを設置

現場でLOTOを徹底するためのポイント

  • 標準作業手順書(SOP)にLOTO手順を明記
  • 点検や修理の都度、LOTOを必ず実施
  • 関係者以外が解除できない仕組みにする
  • 複数人で作業する場合、各人に専用のロックを配布
  • 作業終了後はロックの解除と通電の確認を徹底

教育・訓練の実施と運用ルールの整備

LOTOは制度として定めるだけでなく、全作業員が理解・実践できるよう教育・訓練を行うことが不可欠です。

  • 新規入社時の安全教育で必ず取り扱う
  • 定期的なリフレッシュ研修を実施
  • ヒヤリハット報告と連携して運用見直し

教育内容の例

  • LOTOの基本概念
  • 使用する機器や装置の操作方法
  • 実際にロック・タグを取り付ける演習

ロックアウト・タグアウトに使われる道具と表示例

主な道具:

  • ロックアウトパッドロック(鍵付き)
  • ブレーカーロック
  • バルブロックアウト装置
  • グループロックボックス
  • 注意喚起タグ(紙・耐水仕様)
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よくあるトラブル・誤解とその対策

よくある誤解対策
電源スイッチを切れば安全だと思っている制御回路や残留電力にも注意を払う
タグだけで十分だと思っている可能な限りロックアウトを優先する
他人のロックを勝手に外す管理責任者の許可がない限り解除禁止を徹底
ロック解除を忘れて機器が使えない作業終了時の解除手順を明記しておく

まとめ:LOTOは“命のスイッチ”

ロックアウト・タグアウトは、機械設備の誤作動による重大事故を未然に防ぐ“命を守るスイッチ”です。安全衛生法107条の趣旨に沿い、現場の全員が正しく理解・実践することで、職場の安全文化は大きく前進します。

「めんどうくさい」では済まされない、安全と命の分岐点。それがLOTOの現場における本当の意味です。

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