「高所作業車 特別教育」と「高所作業車 技能講習」は、高所作業に従事するすべての作業者・事業者が知っておくべき労働安全衛生法に基づく法定教育制度です。しかし、作業床の高さや使用用途によって必要な講習が異なるため、正確な理解が重要です。本記事では、法律に基づいた受講義務、対象範囲、講習内容、最新のオンライン講座対応まで、現場責任者・安全衛生担当者向けに網羅的に解説します。

高所作業車とは?|定義と種類
高所作業車とは、作業床を昇降させて高所で作業を行うための機械で、以下のようなタイプがあります。
- 垂直昇降型(スカイマスター)
- 屈折ブーム式
- 直伸ブーム式
- トラック搭載型作業車
主に、建設業・電気通信業・看板取付業・造園業などで使用され、作業床の高さによって教育区分(特別教育 or 技能講習)が分かれます。
特別教育と技能講習の違い
区分 | 高所作業車の高さ | 教育区分 | 法的根拠 |
---|---|---|---|
10m未満 | 作業床の高さ10m未満 | 特別教育 | 労働安全衛生法第59条3項、安衛則第36条第10の5号 |
10m以上 | 作業床の高さ10m以上 | 技能講習(修了必須) | 安衛則第20条第9号 |
誤解されやすいポイント:
- 「車両の全高」ではなく「作業床の高さ」が基準です。
- 実際に10m以上昇降する予定があるなら、技能講習の修了が必要です。
【法的根拠】労働安全衛生法と高所作業車の位置づけ
特別教育の根拠:
- 労働安全衛生法 第59条第3項
- 安全衛生規則 第36条第10の5号
技能講習の根拠:
- 安衛則第20条第9号
- 安全衛生特別教育規程(厚生労働省告示)
特別教育の詳細|対象・時間・カリキュラム
対象者:
- 作業床の高さが10m未満の高所作業車の運転業務に従事する作業者。
教育内容(合計9時間):
■ 学科(6時間):
- 作業車の構造と取扱い方法(3h)
- 原動機に関する基礎知識(1h)
- 運転に関する一般的知識(1h)
- 関係法令(1h)
■ 実技(3時間):
- 高所作業車の操作方法
- 安全装置・点検項目の確認
- 作業床での墜落防止措置

修了証の発行:
受講完了後、修了証が即日発行されます。カード形式が主流。
技能講習の詳細|対象・講義時間・実技内容
対象者:
- 作業床高さ10m以上の高所作業車を操作する予定の作業者。
- 自動車免許所持者が対象となる場合もある。
教育内容(合計14時間以上):
■ 学科(8時間):
- 高所作業車の構造・法令・災害事例・運転操作の基礎
■ 実技(6時間以上):
- 安全装置の点検
- 実際の走行・操作・ブーム展開・緊急操作
- 異常時対応

修了証の発行と管理義務
- 事業者は修了証の写しを事業所に保管する義務があります。
- 労働基準監督署の立入検査において提示を求められる場合あり。
- 紛失した場合は、再発行可能だが講習機関への問い合わせが必要。
オンライン(eラーニング)対応状況と注意点
近年では、学科教育に限りeラーニング対応の講習機関が増加しています。
メリット:
- スマホ・PCで受講可能
- 顔認証+受講ログ管理でコンプライアンス対応
- 多拠点企業の効率的な教育が可能
注意点:
- 実技は必ず対面での実施が義務付けられています。
- オンライン講習修了のみでは不十分。
教育後の点検・安全管理義務
- 教育後も作業前点検・月例点検・年次点検が必要。
- 墜落制止用器具の使用指導(フルハーネス型)が義務。
- 事故発生時は労働災害として書類提出義務あり。

よくある質問(FAQ)
Q1. 技能講習と特別教育の両方を受ける必要がありますか?
→ いいえ。該当する作業床高さに応じていずれか1つが必要です。
Q2. 修了証の有効期限は?
→ 有効期限は法的に定められていません。 ただし企業が5〜10年で再教育するのが一般的です。
Q3. 外国人作業者にも必要?
→ はい。 通訳付きでの受講・多言語教材の使用などで対応可能です。
最後に
労働災害のなかでも高所作業は死亡・重大事故のリスクが非常に高い領域です。「高所作業車 特別教育」や「技能講習」を正しく実施することは、単なる法令順守にとどまらず、現場の安全文化を築く第一歩です。今すぐ、自社の高所作業従事者の教育状況を確認し、必要な講習を受けさせましょう。
