「皮膚等障害性化学物質」とは、皮膚や目から吸収され、健康に影響する物質で厚生労働省が指定した物質のことを言います。
この記事では、皮膚等障害性物質の概要と管理策についてわかりやすく解説します!

皮膚等障害性物質の区分
皮膚等障害性化学物質には以下の2種類の区分があります。
(1)皮膚刺激性有害物質
皮膚または眼に障害を与えるおそれがあることが明らかな化学物質のことをいいます。
→局所影響(化学熱傷、接触性皮膚炎など)
具体的には、国のGHS分類結果や事業者のSDS等に記載された有害性情報のうち、「皮膚腐食性・刺激性」、「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」及び「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれかで区分1に分類されているものです。

(2)皮膚吸収性有害物質
皮膚から吸収され、もしくは皮膚に侵入して、健康障害のおそれがあることが明らかな化学物質をいいます。
→全身影響(意識障害、各種臓器疾患、発がんなど)

皮膚等障害性物質の対象物質は?
(1)対象物質の一覧
皮膚等障害性化学物質のリストは以下のサイトよりご確認ください。
⇒皮膚等障害化学物質及び特別規則に基づく不浸透性の保護具等の使用義務物質リスト

表の一番右側に赤文字で「裾切値」が掲載されています。
含有率が裾切値未満であるときは、「皮膚等障害性化学物質」に該当しないため、法令の対応は不要です。
(2)SDSから判別する方法
取扱物質のSDSやメーカーのウェブサイトを確認し、「15.適用法令」の表示に「皮膚等障害化学物質等」の記載の有無を確認しましょう。
・SDSの危険有害性の区分を確認し「皮膚腐食性・刺激性」、「眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性」、または「呼吸器感作性又は皮膚感作性」のいずれかが区分1である場合は、「皮膚等障害化学物質等」に該当します。

不浸透性の保護具が必要です
皮膚等障害性化学物質に該当する化学物質を取扱う場合は、不浸透性の保護具を着用する必要があります。
(1)不浸透性の保護具ってなに?
不浸透性の保護具には、保護衣、保護手袋、保護メガネ、履物などがあります。
(2)不浸透性の保護手袋ってなに?
不浸透性の保護手袋は、日本産業規格(JIS) T 8116 に適合した「化学防護手袋」のことを言います。
保護手袋には「耐切創用手袋」や「絶縁用手袋」、「化学防護手袋」などいろいろ種類があります。
皮膚等障害性化学物質を取扱う場合は、必ず「化学防護手袋」を着用するようにしましょう!


不浸透性の保護手袋の選び方は?
不浸透性の保護手袋の選び方は非常に難しいです。
手袋の材料や厚さなどいろいろあり、化学物質の浸透性によって適切なものを選ぶ必要があります。
ここからは、簡単にスムーズに選んでいただけるよう、解説します。
(1)保護手袋を選ぶ前に必要な情報をまとめましょう。
保護手袋を選択するために必要な情報は以下の通りです。
- ①対象とする化学成分はなんですか?
- ②どのような作業を行いますか?
- ③保護手袋を着用開始してから交換までの時間はどのくらいですか?
それぞれの質問について、順番に確認していきましょう。
質問①「対象とする化学物質はなんですか?」
⇒SDSなどから「皮膚等障害性化学物質」に当たる成分を控えてください。
質問②「どのような作業を行いますか?」
⇒下の画像の赤枠の作業分類3つから、もっとも当てはまる作業分類を選んでください。

質問③「保護手袋を着用開始してから交換までの時間はどのくらいですか?」
⇒下の赤枠の時間枠で当てはまるものを選んでください。
※化学物質が付着したときから手袋への浸透が始まりますので、作業時間ではなく、手袋を使い始めてから交換するまでの時間で考えるのが適切です。

(2)上記(1)の情報をもとに選べる化学防護手袋の種類を確認します。
①耐透過性能一覧表のリンクを開いてください。
②上記(1)①の質問の回答より、対象物質の列を確認します。
(例)「1-ニトロプロパン」で以下説明していきます。

③上記(1)②と③の質問の回答より、対象の記号(◎、〇、△)を確認します。
(例)質問②より「作業分類1」、質問③より「60分から240分」だとします。
そのとき、下の画像より、当てはまる記号は「◎」「〇」なのが分かります。

③耐透過性能一覧表より、対象物質で当てはまる記号を探し、着用可能な「材質」「厚さ」を確認します。
(例)「1-ニトロプロパン」で記号「◎」「〇」を探すと、下の画像から「ブチルゴム」で「厚さ0.35mm」が選択できることがわかります。

(3)ここまでで、化学防護手袋の材質と厚さが決まりました。
あとは、日本産業規格「JIS T 8116」に適合する商品を選ぶだけです。
