
高所作業の現場で命綱となる「安全帯」。しかしその安全帯にも「使用期限」があることをご存知でしょうか?
現場では「まだ見た目がきれいだから使える」「一度も落下してないから大丈夫」といった誤った認識のまま使用し続けてしまうケースが多く見られます。
2019年に施行された法改正により、安全帯は「墜落制止用器具」と名称が変わり、新しい規格が導入されました。これにより、旧型安全帯は期限を過ぎると使用が禁止され、違反すれば罰則の対象になることもあります。
この記事では、「安全帯の使用期限」に焦点を当て、安全帯の基本、使用期限、点検の義務、法令上の罰則、正しい管理法まで詳しく解説します。
安全帯とは?法改正で「墜落制止用器具」に名称変更
かつて「安全帯」と呼ばれていたものは、労働安全衛生法の改正により、正式には「墜落制止用器具」と表現されるようになりました。
これは高所作業での墜落を防ぐための器具で、以下の2種類に分かれます。
- フルハーネス型(新規格):胴体全体を支える構造で、墜落時の衝撃を分散できるため、現在の主流。
- 胴ベルト型(旧規格):腰回りを固定するタイプ。2022年以降、多くの現場で使用禁止に。
特に高さ2m以上の作業においては、原則としてフルハーネス型の着用が義務化されています。
2. 安全帯の種類とその使用期限

フルハーネス型の使用期限
- 使用期限の目安:製造日から3年〜5年程度
- 実際の耐用年数はメーカーによって異なるため、必ず製品ラベルや取扱説明書を確認する必要があります。
胴ベルト型(旧規格)の使用期限
- 2022年1月1日以降、原則使用禁止となりました。
- 一部の例外(腰より低い位置での作業など)を除いては、使用してはいけません。

使用期限を切れた安全帯を着用すると、法律違反になるの?

法律違反にはならないよ。
ただし、命を守る道具だから、必ず使用期限を守って使用させるようにしようね!
使用期限はどこで確認する?製造年と耐用年数の見方
安全帯の使用期限は、通常「製品タグ」や「本体に貼付されたラベル」に明記されています。確認するポイントは以下の通りです:
- 製造年月日(Year/Month)
- 製造ロット番号
- 耐用年数(メーカー指定)
- 使用開始日(管理者が記入)
たとえ一度も使用していなくても、製造から一定年数が経過すれば使用期限切れと判断されます。使用前点検・定期点検記録も保管が義務付けられています。

墜落する危ない場所で、使用期限が切れた保護具を使うのは怖いよね。
どうやって使用期限を管理しようかな?

製品タグにマジックで「使用開始年月日」を書いておこう。
期限チェックを使用者任せにせず、月に1回は責任者が確認するようにしよう!
義務化されている点検と安全帯の管理方法
安全帯は毎使用前の点検が法律で義務付けられ、定期点検(最低月1回)についてガイドラインによって推奨されています。
■ 労働安全衛生規則(安衛則) 第518条
墜落制止用器具(安全帯)などの保護具は、「使用前に点検し、異常がある場合は使用しないこと」が規定されています。
■ 墜落制止用器具のガイドライン(厚生労働省 通達)
2019年以降の新ガイドラインでは、以下が明記されています:
- 使用前の点検を作業者が毎回実施すること
- 定期点検(例:月1回以上)は事業者が責任を持って実施
- 点検記録の保管と更新も必要
点検項目の例
- ベルトやロープに摩耗・裂け目・劣化がないか
- フックのバネが弱っていないか
- 金具に変形や腐食がないか
- 縫製部分のほつれ・ほころび
適切な保管方法
- 直射日光・高温多湿を避けた場所で吊るして保管
- 化学薬品や油が付着しないように注意
- 専用ロッカーやコンテナで管理
よくある質問と現場での誤解
Q. 使っていないのに、なぜ期限が切れるの?
A. 材料の劣化や紫外線・湿気による劣化は使用の有無に関係なく進行するためです。
Q. 見た目がキレイなら使っていいのでは?
A. 外見上問題がなくても、内部構造が劣化している可能性があります。
事故時に「見た目で判断していた」と言い訳は通用しません。
安全帯の交換・廃棄時の注意点
使用期限が切れた安全帯は、次の方法で廃棄しましょう。
- 明確に「使用禁止」のタグをつける
- 物理的に切断するなどして再使用不可にする
- 産業廃棄物として適切に処理
誤って別の人が使ってしまうことがないよう、徹底した処分が重要です。
関連法令・通知まとめ
- 厚生労働省:『墜落制止用器具の安全基準について(平成31年通達)』
- 労働安全衛生規則 第518条、519条など
- 墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン
これらの法令・ガイドラインに沿って、会社として明文化された管理ルールを策定しておくことが望まれます。
まとめ:安全帯の期限管理は命を守る第一歩
「安全帯の使用期限なんて気にしたことなかった」という方も多いかもしれませんが、それは非常に危険な考え方です。
高所作業では、ちょっとしたミスが命取りになります。適切な器具の選定・使用・管理が、作業者の命を守る最前線なのです。
🔽 最後にポイントをおさらい:
- 安全帯(墜落制止用器具)には使用期限がある(おおむね3~5年)
- 旧型胴ベルト型は2022年以降、原則使用禁止
- 使用期限切れで事故が起きれば、罰則や損害賠償の対象に
- 点検・管理・記録の義務を怠らないことが大切