化学物質管理者の役割・業務内容・選任条件

化学物質を扱う現場では、その取り扱いが不適切であると、従業員の健康を害する可能性があり、また環境に重大な影響を及ぼすこともあります。

これを防ぐために、日本では化学物質管理者制度が設けられています。

特に、労働安全衛生法に基づく化学物質管理者は、企業内での化学物質の管理、リスクアセスメント、そして安全対策の実施において、極めて重要な役割を果たします。

本記事では、化学物質管理者制度について、その義務、資格要件、講習内容、リスクアセスメントの方法などを詳しく解説します。

化学物質管理者の義務化とは

労働安全衛生法は、労働者が安全で健康的な環境で働くことができるようにするための法的枠組みを提供しています。この法律の中で、化学物質の管理は特に重要視されています。

なぜなら、化学物質はその性質上、取り扱いを誤ると爆発や火災、有毒ガスの発生などが生じる危険があるからです。

1990年代以降、日本では化学物質による労働災害が増加したため、労働安全衛生法の改正が行われ、企業は化学物質を扱う現場で専門知識を持った「化学物質管理者」を配置することが義務付けられるようになりました。

労働安全衛生法は、労働者の健康と安全を保護するために制定された法規であり、化学物質の取り扱いにおいても、その管理方法に厳格な基準を設けています。

この法律は、企業が化学物質を使用する際に、その取り扱いが労働者の健康に及ぼすリスクを最小限に抑えるために必要な措置を講じることを義務付けています。

化学物質管理者は、労働安全衛生法に基づいて、化学物質の取り扱いが適切に行われるよう監督し、管理しなければなりません。

化学物質が引き起こす危険性を最小限に抑えるために必要な知識と技能を持つ専門家として、管理者の重要性は増しています。

化学物質管理者は、主に以下のような業務を担当します。

化学物質管理者は、単に化学物質を管理するだけでなく、企業全体の安全性を確保するためのリーダーとしての責任も負います。

そのためには、リスクアセスメントに基づいて実施すべき安全対策を提案し、企業全体の安全管理体制を整備する役割も求められます。

化学物質管理者として活動するためには、一定の資格を取得し、一定の基準を満たす必要があります。

資格を得るためには、学歴や実務経験、または特定の講習を受講することが求められます。

化学物質管理者の資格を取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。

学歴：高校卒業以上が基本条件ですが、化学系、環境系、工学系の大学や専門学校での学位を取得していることが望ましい。
実務経験：一定の実務経験を有することが求められる場合もあります。化学物質の取り扱いに関する経験や管理業務の経験があれば、より有利です。
講習の受講：特定の講習を受けることで、資格を取得することができます。これらの講習では、化学物質の取り扱いやリスクアセスメントに関する専門的な知識が学べます。