夏場の高温環境や屋内外での作業では、熱中症のリスクが高まります。
特に、工場・建設現場・オフィスなどでの適切な対策が不可欠です。
熱中症は予防できる疾患であり、職場での環境管理や従業員の意識向上が重要です。
本記事では、職場における効果的な熱中症対策や応急処置の方法について詳しく解説し、安全で快適な労働環境を実現するためのポイントを紹介します。
熱中症とは？職場でのリスクを理解する
熱中症の原因と発生メカニズム
熱中症は、高温多湿の環境下で体温調節機能が正常に働かなくなることで発生します。
発汗による体温調節がうまくいかず、体内に熱がこもることで、めまい・頭痛・吐き気などの症状が現れ、重症化すると意識障害や多臓器不全を引き起こす可能性があります。
熱中症の症状レベル
熱中症は症状の重さによって以下の3段階に分類されます。
- 軽度（Ⅰ度）：めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉のこむら返りなどが見られる。
- 中等度（Ⅱ度）：頭痛、吐き気、倦怠感、集中力の低下、体温上昇がみられ、症状が進むと意識がもうろうとすることがある。
- 重度（Ⅲ度）：意識障害、けいれん、高体温（40℃以上）、ショック症状などが現れ、迅速な救急対応が必要。
職場での主な発生場所とリスク要因
屋外作業では直射日光の影響を受けやすく、工場や倉庫では機械の稼働によって室温が上昇しやすくなります。オフィスでは空調の不備や換気不足が影響し、厨房やボイラー室では火や蒸気によって高温多湿になりやすい環境が生まれます。
職場での熱中症予防対策
環境管理（温度・湿度の適正化、換気の徹底）
エアコンや扇風機を活用して室温を28℃以下、湿度を50～60％に維持し、直射日光を防ぐために日よけや遮熱シートを設置します。屋外作業では日陰を確保し、ミスト噴射設備の導入を検討することが有効です。
熱中症を防ぐためには、単なる気温のチェックだけでなく、湿度や輻射熱も考慮したWBGT（暑さ指数）を活用することが重要です。
作業スケジュールの工夫（休憩時間の確保、無理のない業務配分）
定期的な休憩を設け、休憩所の温度を適切に管理することで、労働者の負担を軽減できます。最も暑い時間帯を避けた作業スケジュールの調整や、交代制勤務の導入も効果的です
水分補給と塩分補給の重要性
こまめな水分補給を促し、汗とともに失われる塩分やミネラルを補うためにスポーツドリンクや経口補水液を用意します。アルコールやカフェインの摂取は控えましょう。
暑熱順化の重要性
暑熱順化とは、高温環境に徐々に体を慣らし、発汗機能や循環機能を向上させることで、熱中症のリスクを低減する適応プロセスです。
新しく高温作業に従事する場合や、夏本番を迎える前には、短時間の作業から始め、数日間かけて体を慣らすことが推奨されます。
適切な水分補給と休憩を確保しながら、無理のない範囲で徐々に作業時間を延ばすことで、熱に対する耐性を高めることができます。
従業員の健康管理と教育
熱中症の初期症状の理解と早期対応
軽度ではめまいや立ちくらみ、中等度では頭痛や倦怠感、重度では意識障害やけいれんなどの症状が現れます。初期段階で適切な対処を行うことが大切です。
従業員向けの熱中症対策研修の実施
熱中症の基礎知識や応急処置方法を学ぶ研修を実施し、「のどが渇く前に水を飲む」「体調の変化に注意する」などの習慣を身につけます。監督者による定期的な健康チェックも効果的です。
体調チェックと健康管理のルール策定
出勤前の体調チェックを実施し、異常がある場合は報告を徹底します。睡眠不足や食生活の乱れに注意し、持病を持つ従業員には特別な配慮を行います。
緊急時の対応と応急処置
熱中症発症時の初期対応と救急措置
涼しい場所へ移動し、衣服を緩めて風を送り、首や脇、太ももの付け根を冷やします。意識がある場合は水分を少しずつ補給し、症状が改善しなければ119番通報を行います。
119番通報のタイミングと適切な処置
意識障害、水分摂取不能、けいれんが見られた場合は直ちに救急車を要請します。
職場での救護体制の整備
救急キットの常備、応急処置訓練の実施、近隣の医療機関の連絡先の共有を行い、迅速な対応ができる体制を整えます。
職場全体で取り組む熱中症対策の実践例
成功事例：企業の熱中症対策の取り組み
建設業では作業開始前に「熱中症予防ミーティング」を実施し、工場では水分補給の時間を設けることで対策を強化しています。オフィスでも熱中症チェックシートを活用し、注意喚起を行います。
具体的な対策チェックリスト
- エアコンや扇風機の適切な使用
- 定期的な水分補給の促進
- 休憩時間の確保
- 熱中症研修の実施
- 緊急時の対応マニュアルの整備
まとめ：効果的な熱中症対策で安全な職場をつくる
職場の熱中症対策は、環境整備、健康管理、緊急対応の3つの柱で成り立っています。企業全体で対策を徹底し、従業員の健康を守ることで、安全な職場づくりを実現しましょう。
