
労働安全衛生法における保護帽(ヘルメット)は、作業現場での頭部保護を確実にするために重要な役割を果たします。特に、飛来・落下物、墜落、電気作業においては、適切な種類の保護帽を選ぶことが命を守るために欠かせません。
本記事では、労働安全衛生法に基づく保護帽の種類や選び方、検定合格品の条件、さらに保護帽の耐用年数についても解説します。これを読めば、現場での安全対策がより効果的になります。
労働安全衛生法における保護帽の概要
労働安全衛生法とは
労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守るために制定された法律で、作業環境の危険を最小限に抑えるための基準を定めています。特に危険を伴う現場では、保護具の使用が義務付けられており、その中で保護帽は重要な役割を果たします。
保護帽の役割と重要性
保護帽は、作業現場での頭部の衝撃や落下物からの保護を目的としています。頭部への衝撃は、労働災害で最も深刻な障害を引き起こす可能性が高いため、保護帽の使用は法的に義務づけられています。
保護帽の種類
飛来・落下物用保護帽
飛来・落下物用保護帽は、落下物や飛来物から頭部を保護するための基本的な保護帽です。これらは建設現場や製造業などで、上から落ちてくるものから作業者を守ります。労働安全衛生法では、これらの作業環境での使用が推奨されています。
墜落用保護帽
墜落用保護帽は、高所作業や足場作業などで使用されます。墜落事故の際、頭部に衝撃を受けないように設計されており、特に強力な衝撃吸収機能を備えています。このタイプの保護帽は、墜落したときにケガのリスクを少なくするために不可欠です。
電気用保護帽
電気用保護帽は、電気作業を行う現場で使用される特殊な保護帽で、電流が流れないように設計されています。感電のリスクを避けるため、電気用保護帽は絶縁性能を持ち、電気作業に従事する作業者には必須の装備となります。

検定合格品は画像のようなシールが貼られています。目的に適した保護帽なのか、必ず確認するようにしましょう。
※画像の例は、「飛来・落下用」「墜落用」「電気用」のすべての性能を満たしたものです。
保護帽の選び方

作業環境に応じた選定
保護帽は、作業現場の環境に応じて選ぶ必要があります。飛来・落下物用、墜落用、電気用のどれを選ぶかは、作業内容や危険要因によって異なります。
サイズとフィット感の重要性
保護帽は作業者の頭にぴったりとフィットすることが求められます。サイズが合わない保護帽は、安全性が低下するだけでなく、作業中の不快感も引き起こします。
通気性と快適性
長時間使用することが多い保護帽は、通気性が良く、蒸れにくいデザインが求められます。特に暑い季節の作業では、快適な着用感を維持することが重要です。
検定合格品とその基準
検定合格品の重要性
労働現場で使用する保護帽は、見た目がしっかりしていても、法律に基づいた性能基準を満たしていなければ、いざという時に命を守ることはできません。そのため、労働安全衛生法に基づく「型式検定」に合格した製品、いわゆる「検定合格品」の使用が推奨されています。これにより、使用者は信頼できる性能の保護帽を選ぶことができます。
検定基準と適合証明書
保護帽の検定は、以下のような試験によって実施されます。
- 耐貫通性試験:上から尖った物が落下しても貫通しないかを確認する。
- 衝撃吸収性能試験:衝撃を受けたときに頭部へのダメージをどれだけ吸収できるかを確認する。
- 耐電圧性試験:電気用保護帽として使用する場合、電気を通さずに絶縁性能を保てるかを確認する。
これらの試験をクリアした保護帽は、厚生労働省の定める「保護帽の規格」に適合していると認定され、型式検定合格品として市場に出回ります。
労検ラベルとは?
型式検定に合格した保護帽には、「労検」ラベルが貼付されています。これは、製品が検定に合格したことを示す証明であり、使用者にとって非常に重要な目印です。
労検ラベルには、以下のような情報が記載されています(表記方法はメーカーによって若干異なる場合があります)
- JIS規格等の記載
- 検定取得(更新)年月
- 検定番号
- 製造会社名
- 製造年月
- 使用区分(例:飛来・落下物用、墜落用、電気用)
- 帽体材質(使用している材料名)

保護帽の耐用年数

保護帽の耐用年数の定義
保護帽の耐用年数は、使用条件や保管状態によって異なりますが、一般的に保護帽の耐用年数は約3年~5年とされています。経年劣化により衝撃吸収性能が低下するため、定期的な交換が推奨されます。
耐用年数のチェックポイント
耐用年数を判断するためには、保護帽にひび割れや破損がないかを定期的に確認することが必要です。また、内部のパッドやストラップの状態もチェックし、傷んでいる場合は早期に交換することが重要です。
交換のタイミング
保護帽の交換は、使用開始から一定の年数が経過した後、または外的衝撃を受けた場合に行うべきです。使用頻度が高い場合や過酷な環境下での使用が多い場合は、早めに交換することをお勧めします。
保護帽の使用義務と規定
保護帽の使用義務
労働安全衛生法第62条において、危険を伴う作業には保護帽の使用が義務付けられています。作業者が保護帽を着用しない場合、事業主は法的責任を問われる可能性があります。
必須規格と適合証明
保護帽は、JIS規格などの適合証明を受けた製品を使用する必要があります。規格に適合した保護帽を使用することで、作業者の安全を確保することができます。
保護帽の正しい取り扱いと維持管理

使用前のチェック
保護帽の使用前には、ひび割れや汚れ、破損がないかを確認しましょう。これらが見つかった場合は、使用を避けて交換を行います。
日常的なメンテナンス方法
保護帽は、定期的に清掃し、ストラップや内部のパッドがしっかりと固定されているかをチェックすることが重要です。これにより、保護帽の性能が保たれます。
保管方法と寿命
保護帽は、直射日光や高温多湿の場所を避けて保管しましょう。また、使用頻度や経年劣化により保護帽には寿命があるため、定期的に交換することが推奨されます。
保護帽安全点検チェックリストの配布
保護帽の安全チェックリストを作成しました。職場の中で、ぜひご活用ください。

まとめ
労働安全衛生法では、一定の作業について保護帽の使用が義務づけられており、作業現場での頭部保護は極めて重要です。適切な保護帽を選び、正しく使用することで、労働災害を防ぐことができます。
作業環境に合わせた保護帽を選び、適切に維持管理することが、安全な作業環境を作り出すための第一歩です。