特定化学物質の概要と管理方法について

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特定化学物質って対象物質が多く、法令が非常に複雑です。

適用除外となる条文もたくさんあるため、具体的な管理方法がよくわからないとお困りではありませんか?

この記事では、特定化学物質の内容説明と管理方法について具体的にご紹介します。

特定化学物質って何?

特定化学物質は、がん等の遅発性障害の健康障害を引き起こす可能性のある物質です。

どんな物質が指定されているの?

労働安全衛生施行令の別表3に記載されている物質が、特定化学物質です。

特定化学物質は、「第一類物質」、「第二類物質」、「第三類物質」に分類されます。

  • 第一類物質

がんなどの慢性・遅発性の障害を引き起こす物質のうち、特に有害性が高く重度の健康障害を発生しやすいものです。

  • 第二類物質

がんなどの慢性・遅発性の障害を引き起こす物質のうち、第一類物質に該当しないものです。

  • 第三類物質

大量漏洩により急性中毒を引き起こすものです。

さらに、有機溶剤として規制されていた物質などで「がん」の原因物質の可能性のある物質で有機溶剤予防規則の適用を受ける物質として「特別有機溶剤」があります。

特化則の適用除外

特定化学物質を含有する製品であっても、適用除外により特定化学物質予防規則の適用を受けない場合があります。

  • 含有量による適用除外

多くのものは含有量が1%以下であれば特化則は適用除外となります。

一部、5%以下の物質もあるため、よく確認しましょう。

  • 業務による適用除外

 特化則第2条の2によると、特定化学物質を使用している場合でも、業務内容によっては暴露のリスクが少なく、特化則の適用外となる場合があります。

(例)エチルベンゼンの「塗装業務」は対象外 です。

換気装置など

第一類物質、第二類物質を取扱う場合は、「密閉化」、「囲い式の局所排気装置」、「プッシュプル装置」のいずれかを設置する必要があります。

使用後の処理

第一類物質、第二類物質の「粉じん」、「排ガス」、「排液」をそのまま外部へ排出した場合、大気、地下水などを汚染し、従業員や地域住民の健康障害を引き起こすおそれがあります。

そのため、外部へ排出するには有害物を除去したり、無害化する設備を設置する必要があります。

除去・無害化する設備は以下の通りです。

・除じん装置

・排ガス処理装置

・排液処理装置

作業主任者の選任

 特定化学物質を取扱う場合、作業場所ごとに作業主任者を選任する必要があります。 

 作業主任者は保護具の監視を行う必要がありますので、交代制を採用している職場では、各勤務帯で選任する必要があります。

また、有給や欠勤される場合に備えて、正・副の2名を選任すると良いでしょう。

(正・副を選任することについて、労基署から指導を受けることが増えているようです)

特定化学物質作業主任者は「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した方から選任する必要があります。

研修は、労働基準協会や中災防などで実施されています。(2日間の講習)

作業主任者を選任した場合は、氏名と職務内容の掲示が必要になります。

作業環境測定の実施

第一類物質と第二類物質を取扱う屋内作業場所では、作業環境測定を6か月以内ごとに1回実施する必要があります。

作業環境測定は、有害物が作業場所の空気中にどの程度、存在しているかを確認し、環境改善の必要性があるかを判断するために行います。

作業環境測定は、作業環境測定士(国家資格)を取得した方が実施します。

作業環境測定は、作業環境の良否の指標として「管理区分」の結果がでます。

管理区分は1~3まであり、管理区分3が最も作業環境が悪い状態をいいます。

管理区分3となった場合は、直ちに管理区分が下がるよう、作業環境改善(発散源の除去や換気装置の設置など)を行い、管理区分2以下にしないといけません。

管理区分3が継続している場合、労基署から是正勧告を受けることになりますので注意が必要です。

作業記録の策定と保管

特別管理物質を取扱う場合は、以下の内容を「作業記録」として作成しなければいけません。

  • 氏名
  • 従事した作業内容
  • 従事した期間
  • 著しく汚染される事態の有無
  • 著しく汚染される事態が発生した場合、その応急措置

(作業記録の一例)

対象物質氏名作業概要著しく汚染される事態応急措置
がん原性物質A25年4月安全太郎部品の洗浄作業地震によって洗浄層の溶剤が約10L程度漏洩した。保護手袋とマスクを着用させ、洗浄層付近の清掃業務を行った。

作業記録は、30年保管が必要です。

発がん性物質は、暴露してもすぐ症状がでるものではありません。

数十年後に、発がんすることも十分考えられます。

もし、発がんしてしまった場合に、従業員が適切に労災保険を受給できるよう、作業記録の保管は適切に行いましょう!

健康診断

第一類物質、第二類物質を常時取扱う場合は、6か月以内ごとに1回特定化学物質の健康診断を実施する必要があります。

健康診断を実施した場合、健康診断個人票を保管しましょう。

また、健康診断の実施記録を労働基準監督署に報告するようにしましょう。

呼吸用保護具の準備

特定化学物質のガス、蒸気、粉塵を吸入することによる健康障害を予防するため、呼吸用保護具を準備する必要があります。

局所排気装置を設置している場合、保護具を着用する義務はありませんが、大量漏洩などの異常発生時に備えて、呼吸用保護具を備えておくことが義務とされています。

呼吸用保護具は人数分を用意し、適切に使用できるよう清潔に保管するようにしましょう。

特定化学物質に関する掲示

特定化学物質を取扱う場合、以下の掲示が必要になります。

  • 特定化学物質の名称や人体への影響などの掲示
  • 飲食・喫煙の禁止の掲示
  • 作業主任者の氏名と職務の掲示
  • (保護具着用管理責任者がいれば)保護具着用管理責任者の氏名の掲示


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