「令和5年労働基準監督年報」の内容を解説します。


2025年3月5日に厚生労働相から令和5年労働基準監督年報が出されました。

監督年報を読み解くことで、監督署が何を重視して監督を実施しているのかよくある違反事項はどんなものがあるのかが分かります。

労働問題は減少している?(年次別監督実施状況 p11)

令和5年度の監督件数は合計で17万件になります。

内訳は、定期監督が約14万件、申告監督が約2万件、再監督が1.3万件にでした。

コロナ渦の時期は監督件数が合計で約15万件程度で、監督官の人数は大きく変動していないことから、監督への行きづらさがあったものと思われます。

令和5年の監督件数は、コロナ渦前の水準まで戻っています。

令和5年度の申告件数は、全体の11%になります。

申告監督」とは、自身の労働問題について監督署に是正を求め、それをきっかけに監督に行った監督のことをいいます。 長期で見ると、申告監督の件数・割合は減少傾向にあり、「働き方改革」の効果もあってか、 労働問題を抱える人の人数が減少している傾向にあると思います。

「定期監督等実施状況・法違反状況 (p14)」から分かること

(1) 業種で分析すると

   監督件数でみると、

    1位:建設業

    2位:製造業

    3位:小売卸売業

  となっています。

1位の「建設業」は建築現場の数も多く、高所作業が多く、安全リスクの高い仕事をされていることから、監督件数が多くなっているものと思います。

2位の製造業は、食料品製造業の監督件数が多くなっています。

食品加工の機械で回転体を持つ設備があり、食品を投入することから、回転体に身体が巻き込まれるような重篤な災害が発生するリスクがあることから、監督件数が多くなっているものと思います。

3位の小売卸売業は、事業所の数と従事する労働者の数が圧倒的に多いことから、監督件数も必然的に多くなっているものかと思います。

(2) 定期監督の違反内容で分析すると

  違反件数として多いのは、

   ① 労働基準法では、

    1位:労基法32条(労働時間)

    2位:労基法37条(割増賃金)。

    3位:労基法39条(年次有給休暇)

    となりました。

○労基法32条は、労働時間を規定した条文です。

時間外労働を行うときは、労基法36条に基づき、36協定(サブロク協定)を会社と労働者で締結します。

36協定では、1日・1か月・1年で残業ができる時間を協定しますが、この時間を 1分でも超えてしまうと、会社は違反を勧告されてしまいます。

○労基法37条は、時間外労働や休日労働への割増賃金の支払いに関する条文です。や

時間外労働に対しては、25%の割増賃金を、 休日労働に対しては、35%の割増賃金を、

深夜労働に対しては25%の割増賃金を支払う必要があります。

○労基法39条は、年次有給休暇を規定した条文です。

働き方改革によって、年間5日は年休を取得させないと決まりましたね。

②労働安全衛生法では、

1位:安衛法66条(健康診断)

2位:安衛法66条の8 (時間の把握)

3位:安衛法45条(定期自主検査)

となりました。

○安衛法66条は健康診断に関する条文です。

一般的な定期健康診断に加えて、深夜労働を行う方への特定健診や、有機溶剤など

有害物を取扱う方に対しての特殊健診の未実施を指摘されている会社が多いようです。

○安衛法66条の8は時間の把握に関する条文です。

これは「労働時間」をタイムカードなど客観的な記録により時間把握をしましょう。

という法律です。

出勤簿などに押印のみしかしていない会社が、違反を勧告されているようです。

○労基法39条は、年次有給休暇を規定した条文です。

働き方改革によって、年間5日は年休を取得させないといけないことが、決まりましたね。

②労働安全衛生法では、

1位:安衛法66条(健康診断)

    2位:安衛法66条の8 (時間の把握)

    3位:安衛法45条(定期自主検査)

となりました。

○安衛法66条は健康診断に関する条文です。

一般的な定期健康診断に加えて、深夜労働を行う方への特定健診や、有機溶剤など

有害物を取扱う方に対しての特殊健診の未実施を指摘されている会社が多いようです。

○安衛法66条の8は時間の把握に関する条文です。

これは「労働時間」をタイムカードなど客観的な記録により時間把握をしましょう。

という法律です。

出勤簿などに押印のみしかしていない会社が、違反を勧告されているようです。

◎安衛法 45条は定期自主検査に関する条文です。

フォークリフトやクレーンなどの設備について、月次検査や年次検査を行うことが法令で決まっていますが、点検を実施していないことにより、違反を勧告されている会社が多いようです。

「申告処理状況(p20)」 から分かること

申告監督は、自身の労働問題に対して監督署に是正を求めることにより実施される監督です。

そのため、賃金や労働時間、年次有給休暇に関する問題が非常に多いのが特徴です。

労働基準法の問題と比較して、安全衛生関係で申告は、約2%程度です。

申告件数として、もっとも多い問題は、「賃金不払」です。

労働者が監督署に申告件数を依頼した件数に対して、 実際に監督署が会社に違反を勧告するのは、約70%程度のようです 残り30%は違反が認められない、すでに是正が完了していた。などが理由かと思います。

「再監督実施件数 (p21)」から分かること。

再監督とは、定期監督などで一度監督を実施したあとで、 もう一度、監督を実施することをいいます。

是正したように見せかけて、もう一度違反状態となっていないかを確認する目的で実施しているようです。

再監督の件数は、約1.3万件です。e

定期監督の件数が約14万件なので、10%の確率でもう1回、監督署がやってきて、会社の様子を確認されることになります。

再監督で、また違反が見つかった会社は53%もあるようです。 (再度同じ違反だけに限らず、別の違反が見つかった場合も含まれます)。

「使用停止等命令処分等実施状況 (p22)」から分かること

「使用停止命令処分」とは、行政処分に該当する重い処分のことをいいます。

通常の労基署の監査で、違反を指摘された場合、行政指導として「是正勧告書」が渡されます。

是正勧告書は行政指導なので、強制力はありません。

一方で、「使用停止命令書」は行政処分であり、強制力を持ちます

法的強制力があり、命令に従わない場合は、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則があります。

設備に使用停止命令がかかれば、設備を完全停止される必要があります。

建設現場に使用停止命令がかかれば、現場は完全にSTOPします。

「使用停止命令書」がかかるのは、一般的に法令を遵守していないすごく危ない状態で、労働者がケガをすると、重たいケガにつながるような場所や設備に対して行われます。

使用停止命令を受けた会社は、令和5年度は約5000件でした。


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