玉掛けワイヤーの選び方と点検ポイント|安全衛生を守るための完全ガイド

玉掛けワイヤーの選び方と点検ポイント|安全衛生を守るための完全ガイド

玉掛け作業において、ワイヤーロープの選定と点検は安全確保の要です。適切なワイヤーの選び方や、日常点検・定期点検のポイントを理解することで、事故のリスクを大幅に減らすことができます。

本記事では、「玉掛け ワイヤー」をキーワードに、選定基準から点検方法、廃棄基準までを詳しく解説します。安全衛生を守るための知識を身につけ、現場での安全作業に役立ててください。

玉掛けワイヤーとは?基本的な知識

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玉掛けワイヤーは、クレーンやホイストなどで荷物を吊り上げる際に使用されるワイヤーロープです。荷物の形状や重量、作業環境に応じて適切なワイヤーを選定し、正しい方法で使用することが求められます。また、労働安全衛生法に基づき、玉掛け作業は有資格者が行う必要があります。


ワイヤーロープの種類と特徴

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ワイヤーロープにはいくつかの種類があり、それぞれに「構造」「芯の種類」「加工方法」などの違いがあります。ここでは玉掛け作業でよく使われるロープについて、わかりやすく整理して紹介します。

構造による分類:6×24、6×37とは?

ワイヤーロープの「6×24」や「6×37」といった表記は、「ストランド(より糸)の数」と「1本あたりの素線の数」を意味しています。

✅6×24(シックス・バイ・トゥエンティフォー)

  • 構造:6本のストランド × それぞれ24本の素線
  • 特徴:適度な強度と柔軟性のバランスが良い
  • 用途:一般的な玉掛け作業に多く使われる

✅ 6×37(シックス・バイ・サーティセブン)

  • 構造:6本のストランド × それぞれ37本の素線
  • 特徴:より柔らかくしなやか。曲げに強いが摩耗しやすい
  • 用途:曲げが多い場所や滑らかに使いたい場合に最適

✅ 6×19

  • 構造:6本のストランド × それぞれ19本の素線
  • 特徴:強度が高く、摩耗に強いが硬め
  • 用途:摩耗しやすい現場や、荷重が大きい場面に向いている

芯(しん)の種類:繊維芯(FC)と鋼芯(IWRC)

ワイヤーロープの中心部分には芯があります。この芯の種類もロープの特性を左右します。

✅ 繊維芯(FC:Fiber Core)

  • 素材:麻などの繊維でできた芯
  • 特徴:軽くて柔らかい、クッション性がある
  • メリット:取り回しがしやすい、手になじむ
  • デメリット:強度がやや低く、熱に弱い
  • 使用例:軽量物の吊り上げや細かい作業に適している

✅ 鋼芯(IWRC:Independent Wire Rope Core)

  • 素材:鋼でできた独立した芯
  • 特徴:非常に頑丈で耐久性が高い
  • メリット:強度が高く、重いものを吊る作業に向いている
  • デメリット:重くてやや硬い、取り回しに注意が必要
  • 使用例:重量物の玉掛け作業や、屋外・高温環境下で使用
表面処理の違い:メッキあり・なし

✅ 亜鉛メッキ(ジンクコート)ロープ

  • 特徴:表面にメッキ加工がされており、錆びにくい
  • 用途:屋外や海沿いの現場、長期間使用が前提の現場に適している

✅ メッキなし(黒ロープ)

  • 特徴:加工費が安く、柔軟性も高いが錆びやすい
  • 用途:屋内や一時的な使用など、コスト重視の現場向き

特殊加工:スリング加工(両端が輪になっている)

玉掛け作業に使うワイヤーは、両端を「アイ加工(輪っか状)」にしてあることがほとんどです。この加工方法にもいくつかの種類があります。

✅圧縮止め(ロック加工)

  • 特徴:アルミスリーブで端を圧縮して固定。強度が安定
  • メリット:高荷重対応、量産に適している
  • 注意点:腐食の可能性があるため、使用場所に注意(特に海辺や化学工場など)

✅ 編み込み(スプライス加工)

  • 特徴:ワイヤー同士を編んで止める伝統的な方法
  • メリット:柔らかくて手にやさしい、安全性も高い
  • デメリット:加工に時間がかかる、熟練の技術が必要

玉掛けワイヤーの選び方(その1)目的で選ぶ

項目柔軟性強度摩耗耐性用途の一例
6×24 FC一般作業、軽量物の吊り上げ
6×37 IWRC曲げが多い場所、高所作業
6×19 IWRC重量物の吊り上げ、屋外作業
メッキあり海辺・雨の多い場所
編み込み加工人の手が触れる作業、安全重視

このように、ワイヤーロープには多くの種類と特性があります。選ぶときは次の3点を意識してください

  1. どんな荷物を吊るのか(重さ・形状)
  2. どれくらい柔らかさが必要か(取り回しのしやすさ)
  3. どんな環境で使うのか(屋外/屋内・海沿いなど)

ワイヤーの正しい選定と管理で、玉掛け作業の安全性は大きく向上します。


玉掛けワイヤーの選び方 (その2)耐荷重で選ぶ

玉掛けワイヤーを選定する際には、以下のポイントを考慮する必要があります。

使用荷重と安全係数

ワイヤーロープの使用荷重は、吊り上げる荷物の重量に対して十分な強度を持つ必要があります。一般的に、安全係数は6以上を確保することが推奨されています。これは、実際の荷重の6倍の強度を持つワイヤーを選定することを意味します。

吊り角度

吊り角度が大きくなると、ワイヤーにかかる張力が増加します。例えば、吊り角度が60度の場合、張力は1.16倍になり、90度では1.42倍になります。そのため、吊り角度はできるだけ60度以内に抑えることが望ましいとされています。


日常点検のポイント

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玉掛けワイヤーは、使用前に必ず点検を行い、異常がないことを確認する必要があります。以下は、日常点検の主なポイントです。

  • 断線の有無:ワイヤーロープ1よりの間において、素線の10%以上の断線がないことを確認します。
  • 摩耗の程度:ノギスなどで直径を測定し、公称径の7%を超える減少がないことを確認します。
  • キンクや変形:ロープのねじれや曲がり、潰れなどがないことを確認します。
  • 腐食の有無:表面に錆や腐食がないことを確認します。
  • アイ部の状態:アイの変形や編み込み部分の緩みがないことを確認します。

これらの点検は、目視や簡単な測定で行うことができます。異常が見つかった場合は、使用を中止し、適切な対応を行ってください。

保管方法と使用上の注意点

  • 点検記録の保管:点検結果を記録に残すことで、異常の早期発見やトレーサビリティが可能になります。定期点検は最低でも月に1回、使用頻度が高い場合は週に1回以上行うことが理想です
  • 油脂の補充:使用中にワイヤーの潤滑油が減少した場合、専用のワイヤーグリスを補充することで摩耗や腐食を防げます。特に屋外で使用する場合、雨水による錆の進行を防ぐために定期的な注油が有効です。
  • 落下防止対策:万が一に備え、ワイヤーが切断した場合でも荷物が落下しないように、補助ワイヤーや安全ネットを設置するなどの工夫も有効です。

まとめ:安全な玉掛け作業のために

玉掛け作業に使用するワイヤーロープは、ただの「道具」ではなく、作業員の命を守る大切な安全装置です。

適切なワイヤーの選定はもちろん、日常点検・定期点検をしっかりと行い、異常を見逃さないことが安全作業への第一歩です。作業環境に合った材質・構造のワイヤーを使用し、使用限度を超えた場合はすみやかに廃棄・交換を行いましょう。

また、作業員一人ひとりがワイヤーの安全使用について理解し、チーム全体で安全意識を高めることが、重大事故の防止につながります。

安全な玉掛け作業のために、「ワイヤーの選び方」と「点検の重要性」を再認識し、日々の業務に生かしていきましょう。

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