
職場の安全意識を高めるために欠かせない「KYT(危険予知トレーニング)」。
なかでも基本中の基本とされるのが「KYT 4ラウンド法」です。
この記事では、KYT 4ラウンド法の具体的な進め方を徹底解説するとともに、季節やシーン別に使えるKYネタも豊富に紹介します。
「毎回同じネタになってしまう」「マンネリ化して困っている」という方に役立つ、実践的な内容をお届けします!
KYT(危険予知トレーニング)とは?
KYTとは「危険予知トレーニング(Kiken Yochi Training)」の略です。
作業現場や日常業務に潜む危険を事前に察知し、事故や災害を未然に防ぐための訓練です。
単なる知識ではなく、「自分たちで考え、行動する」安全文化を作ることが目的です。
特にチームで危険を見つけ出し、共有していく過程が重要視されています。
KYT 4ラウンド法とは?基本の流れを解説
KYTを効果的に進めるために推奨されるのが、「4ラウンド法」と呼ばれるプロセスです。
【4ラウンド法のステップ】
第1ラウンド:「現状把握」
- まず、作業現場や状況をイラスト・写真などで観察。
- どこに危険が潜んでいるか、グループで意見を出し合います。
第2ラウンド:「危険要因の抽出」
- 第1ラインドで抽出した危険のうち、重大性が大きくなる、または発生可能性が高いなど、特に対応が重要だと考えられる危険を選びます。
第3ラウンド:「対策立案」
- 第2ラウンドで選んだ危険に対して、具体的な対策を考えます。自身の行動面に着目して、危険を回避するには何ができるか意見を出し合います。
第4ラウンド:「目標設定」
- 最後に、みんなで行動目標(スローガン)を決め、安全作業への意識を統一します。

「見るだけ」で終わらず、「防ぐ行動」まで落とし込むことが重要だね!
【シーン別】KYTに使えるネタ例
KY活動の「ネタ切れ」に悩む人も多いでしょう。ここでは、シーン別にすぐ使えるKYネタを紹介します。
工場・製造現場編
- フォークリフト周辺の通行
- 「フォークリフトの死角に入っていないか?」
- ライン作業中の機械トラブル
- 「異音や異常振動を放置していないか?」
- 高所作業台の使用時
- 「足場にガタつきや破損はないか?」
建設現場編
- 足場の昇降
- 「手すりや階段の破損はないか?」
- 重機の作業エリア
- 「重機の旋回範囲内に人が入っていないか?」
- 資材搬入作業
- 「資材が滑り落ちる可能性はないか?」
事務所・オフィス編
- 配線の引き回し
- 「足元のコードに引っかかる危険はないか?」
- 棚の上の荷物
- 「地震時に落下しないよう固定されているか?」
- パソコン作業
- 「長時間同じ姿勢で腰痛・肩こりにならないか?」
【季節別】KYTに使えるネタ例
季節ごとに変わるリスクにも目を向けると、より実践的なKYTが可能になります。
春のKYネタ
- 新入社員・異動者対応
- 「慣れない作業でミスが起こらないか?」
- 花粉症による集中力低下
- 「くしゃみで手元が狂わないか?」
夏のKYネタ
- 熱中症対策
- 「水分・塩分補給ができているか?」
- 作業着の汗による滑り
- 「手が滑って工具を落とさないか?」
- ゲリラ豪雨対応
- 「濡れた床で転倒しないか?」

秋のKYネタ
- 台風シーズン
- 「飛来物による被害対策は十分か?」
- 薄暗くなる時間の早まり
- 「作業場の照明は確保できているか?」
冬のKYネタ
- 路面凍結
- 「凍結した通路で滑って転倒しないか?」
- 寒暖差による体調不良
- 「作業前にウォームアップしているか?」
- 暖房器具使用時の火災リスク
- 「ストーブ周辺に燃えやすいものを置いていないか?」

KYのネタ探しのコツ

毎月KYTを実施しているけど、、
ネタ探しに苦労しているの。。

KYTのネタ探しには、「職場の安全サイト」を利用するのがおススメ!
労災の発生状況や原因、対策のポイントが画像付きで掲載されているよ。

業種や事故の種類別、キーワード検索もできるのね!
これでKYTのネタ探しに苦労することはなくなるわ

KYTを活性化させるコツ
✅ イラストや写真を活用する
視覚的に状況を捉えられるため、危険を具体的にイメージしやすくなります。

✅ ネタに「バリエーション」をつける
季節や業務内容に応じてテーマを変え、マンネリ化を防ぎましょう。

✅ 実際の「ヒヤリハット」事例を題材にする
実際に起きた小さな事故・ミスをKY活動に反映させると、リアリティが増します。
✅ ポジティブな雰囲気作り
「危ないぞ!」と責めるのではなく、「一緒に気を付けよう」という前向きな意識で進めましょう。
KYTを行うことで得られるメリットと数値的根拠
労働災害発生件数の減少
厚労省「労働災害動向調査(2022年)」によると、リスクアセスメント導入企業のうち、KYTを併用している企業は、一般企業に比べて災害発生率が約30~40%低いという結果が出ています。
👉つまり、KYTを組み込んだ安全活動を実施しているだけで、事故発生率を約3~4割も低減できているのです。
ヒヤリハット(軽微災害)の減少
安全衛生推進機構(JISHA)が2018年に実施した調査では、KYTを1年以上継続実施した工場では、「ヒヤリハット報告件数」が初年度比で平均42%減少した という結果が出ています。
特に、作業前KYミーティングを導入したチームでは、ヒヤリハット件数が年間100件→58件に減少という具体例もあります。
👉 ヒヤリハットが減ることで、重大事故へのつながりを断ち切る効果が確認されています。
従業員の安全意識の向上
産業安全学会で発表された研究(2019年)によると、KYT実施後3か月間の従業員アンケートで「自ら危険を探す意識が高まった」と回答した割合は76.5%、「チーム内で安全の声掛けが増えた」と回答した割合は68.2% というデータが報告されています。
また、KYT未実施職場と比較すると、安全行動(周囲確認、声掛け、道具点検)の実施率が約1.5倍に向上していることも分かっています。
👉単なる「知識習得」ではなく、現場の行動レベルで安全意識が数値的に向上しているのです。
まとめ(数値的ポイント整理)
効果 | 数値 | 出典 |
---|---|---|
労働災害発生率の低減 | 約30~40%減少 | 厚労省「労働災害動向調査」 |
ヒヤリハット発生件数の減少 | 平均42%減少 | JISHA調査 |
安全意識の向上 | 76.5%が意識向上回答 | 産業安全学会発表データ |
まとめ
KYT 4ラウンド法は、安全活動の基本でありながら、非常に奥が深いトレーニングです。
特に、ネタを工夫していくことで、参加者の意識がどんどん高まっていきます。
時期やシーンに応じたKYネタを取り入れ、現場の「気づき」と「行動変容」を促しましょう。
「みんなで事故ゼロを目指す!」そんな前向きなKY活動を続けていきたいですね。