
作業環境の安全を確保するために欠かせない局所排気装置。
しかし、その効果を最大限に発揮させるには、適切な制御風速を確保することが重要です。
制御風速が基準を満たしていないと、有害物質が作業エリアに拡散し、労働災害のリスクが高まります。
本記事では、制御風速の概要、適切な測定方法や測定位置、管理ポイントまで詳しく解説します。
局所排気装置とは?その役割と重要性
局所排気装置とは、作業環境で発生する有害な粉じん・ガス・蒸気などを吸引・排出し、作業者の健康を守る換気設備です。特に化学工場や金属加工、塗装作業などでは、有害物質が発生しやすく、適切な排気対策が求められます。
局所排気装置の役割は、有害物質が作業者の呼吸域に拡散する前に排出し、職場の空気を清潔に保つことです。これにより、健康被害や労働災害のリスクを低減し、安全な作業環境を維持できます。
制御風速とは?適正な風速の目安
制御風速とは?
制御風速とは、局所排気装置が有害物質を適切に捕集するために必要な最低限の風速を指します。制御風速が不足すると、有害物質が作業エリアに拡散し、作業者の健康被害や労働災害のリスクが高まります。
適切な制御風速の目安は?
有機溶剤の場合
有機溶剤の制御風速は、有機溶剤予防規則の第16条によって、次のように定められています。
囲い式フード | 0.4m/秒 以上 |
外付け式フード 側方吸引・下方吸引 | 1.0m/秒 以上 |
外付け式フード 上方吸引 | 1.0m/秒 以上 |
粉じんの場合
粉じんの制御風速は、「粉じん障害防止規則第十一条第一項第五号の規定に基づく厚生労働大臣が定める要件」によって、次のように定められています。
囲い式フード | 0.7m/秒 以上 |
外付け式フード 側方吸引・下方吸引 | 1.0m/秒 以上 |
外付け式フード 上方吸引 | 1.2m/秒 以上 |
グラインダー用 | 5.0m/秒 以上 |
特定化学物質の場合
特定化学物質の制御風速は、「特定化学物質障害予防規則の規定に基づく厚生労働大臣が定める性能」によって、次のように定められています。
ガス状 | 0.5m/秒 以上 |
粒子状 | 1.0m/秒 以上 |
制御風速の測定方法
風速計で測定する方法
制御風速の測定には熱式風速計やベーン式風速計を使用します。
測定数は、フードによって異なりますが、測定したすべての場所で制御風速を満たす必要があります。
スモークテスターで確認する方法
スモークテスターとは、空気と反応すると発煙する検知管の形状をしたものです。
スモークテスターの使用により、局所排気装置の吸引状態を視覚的に確認することができます。
手順は次の通りです。
- スモークテスターを準備:市販のスモークスティックや発煙装置を用意。
- 煙の発生:吸引口から約30cm離れた位置で煙を発生させる。
- 煙の動きの確認:煙がスムーズに吸い込まれるか観察。滞留・逆流があれば風速不足の可能性あり。
- 必要に応じて調整:フードの位置や風量を調整し、適切な制御風速を確保。
制御風速の測定位置
制御風速の測定位置は、局所排気装置のフードの形式によって異なります。
囲い式の測定位置と測定数
囲い式(有害物の発散源がフードの中)の場合は、フードの入り口(開口部)で測定しましょう。
開口面を1辺30~50cmくらいに分割し、各マスの中央で測定を実施します。測定数はフードに開口面積にもよりますが、最低2点は測定するようにしましょう。

外付け式の測定位置と測定数
外付け式(有害物の発散源がフードの外)フードの場合は、発散する有害物が飛散している最もフードから遠い位置で測定しましょう。
有害物が飛散していると思う作業者に一番近い位置で、少なくとも2点以上は測定しましょう。

制御風速の管理ポイントと注意点
適切な制御風速を維持するために、以下の管理ポイントを押さえましょう。
✅ 定期的な風速測定(月1回など、定期的に測定)
✅ フィルター・ダクトの清掃(詰まりや汚れを除去)
✅ 局所排気装置の適切な設置(吸引口と発生源の距離を最適化)
【注意点】
- 測定は作業時の環境下で行う
- 風速が基準値以下の場合は、吸引力の強化やフード位置の調整を実施
まとめ
局所排気装置の制御風速は、作業者の健康を守るために不可欠な要素です。適切な風速の確保には、正しい測定方法と測定位置の選定、定期的な管理が重要になります。
✅ 制御風速の基準値を把握し、適切な風速を確保する
✅ 定期的に測定を行い、風速が基準値を満たしているか確認する
✅ 局所排気装置の適切な管理を行い、常に最適な状態を維持する
本記事を参考に、局所排気装置の管理を見直し、安全で快適な作業環境を実現しましょう!