
労働災害のリスクを未然に防ぐため、多くの作業現場では「局所排気装置」が設置されています。塗装作業、溶接、薬品使用など、有害物質が発生する工程には欠かせない存在です。しかし、局所排気装置を設置・変更・移設する際には「届出」が必要であることをご存じでしょうか?
この記事では、「局所排気装置 届出」というキーワードを中心に、労働安全衛生法で定められた届出義務の詳細、対象となる装置の条件、届出の手続き方法、注意点などを実務レベルでわかりやすく解説します。
製造業・建設業・化学工場など、産業現場で局所排気装置を使用するすべての担当者必見。「届出を怠ってしまった」「書類作成が不安」という方にも役立つ情報満載です!
局所排気装置とは?その役割と種類
局所排気装置とは、作業場で発生する有害な粉じん、ガス、蒸気などを発生源付近で吸引・除去するための装置です。一般的には以下のような場面で使われます:
主な種類

- フード(開放型・密閉型)
- ダクト
- 排風機
- 集じん機・スクラバー
労働者の健康を守るために、排気装置の適正設計・設置・運用は極めて重要です。
なぜ「届出」が必要なのか?法的根拠を解説
局所排気装置の設置には、労働安全衛生法に基づく「届出義務」があります。根拠となる法令は次の通りです:
- 労働安全衛生法 第88条
- 「労働災害を防止するため、一定の設備を設置しようとする者は、その計画を所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない」
- 労働安全衛生規則 第90条
- 局所排気装置、プッシュプル型換気装置などが対象となる設備に明記されています。
未届出での設置・使用は法令違反となり、企業責任や罰則の対象になります。
局所排気装置の届出が必要なケース
以下のような場合には、必ず届出が必要です:
- 新たに局所排気装置を設置する
- 既存装置を移設・変更・撤去する
- 装置の性能・構造を変更する(例:排風機の交換)
届出対象となる作業例
- 有機溶剤作業(シンナー、トルエン等)
- 特定化学物質作業(ベンゼン、六価クロム等)
- 鉛・粉じん作業

局所排気装置で届出がいらない場合もあるの?

例えば、ガスや蒸気を吸引している場合、対象物の中に有機溶剤や特定化学物質が混じっていない場合は、届出はいらいないよ。余計な手間をなくすため、SDSなどから対象成分を確認しよう!
届出のタイミングと提出先
タイミング
局所排気装置を設置する30日前までに届出書を提出しなければなりません。
提出先

- 管轄の労働基準監督署長
- 会社の事業所を所管する「安衛担当部署」へ提出します。

労基署の「安全衛生課」が窓口だよ。
届出するときは、設置する換気装置について質問を受けるため、回答できる人がいくのが良いね!
【局所排気装置 届出用】申請チェックリスト
以下は、「局所排気装置の設置届出」に関する申請チェックリストの表です。届出前に確認すべきポイントを網羅していますので、社内での管理や労働基準監督署への提出準備にご活用ください。
チェック項目 | 内容 | 確認欄(✓) |
---|---|---|
1. 対象作業の確認 | 局所排気装置が必要な作業(有機溶剤、特化則物質、粉じん等)か確認 | □ |
2. 法令該当の確認 | 労働安全衛生法 第88条、安衛則 第90条に該当するか確認 | □ |
3. 設置時期の確認 | 設置(工事)予定日の30日前までに届出を行う計画か | □ |
4. 管轄労基署の確認 | 正しい労働基準監督署に届出するか確認(事業所の所在地による) | □ |
5. 計画届様式の準備 | 「局所排気装置設置届」(安衛則 別記様式第1号)を準備済みか | □ |
6. 添付図面の準備 | – 構造図(フード、ダクト、排風機等) – 平面配置図 – 排気経路図 | □ |
7. 使用物質の情報 | 使用する有害物質のSDS(安全データシート)を添付 | □ |
8. 設計計算書 | 必要な風速、風量、静圧などを示す計算書を準備済みか | □ |
9. 労働者代表の意見聴取 | 設置計画について労働者代表の意見を聴取済みか(証明欄記入) | □ |
10. 届出方法の確認 | 持参・郵送・電子申請など、提出方法を決定済みか | □ |
11. 記録の控え保存 | 提出前に届出書類のコピーまたはスキャンを保存したか | □ |
12. 完了後の対応 | 装置設置後、定期自主検査と点検計画を立てているか | □ |
届出に必要な書類とその記載例
- 機械等設置・移転・変更届(様式20号)
- 局所排気装置概要書(様式25号)
- 装置の構造図(フード・排風機など)
- 配置図・フロアレイアウト
- 使用する有害物質のMSDS(SDS)
- 設計計算書(風速、風量、静圧など)
記載例や様式ダウンロードは、各都道府県労働局のホームページで提供されています。

局所排気装置の制御風速の計算書やダクトの経路図を求められることがあるよ。
局排を設置した業者に書類作成をお願いして届出するのが確実だよ!
よくあるミスと注意点
- 設置後に届出を忘れる
- 計画書の添付図が不完全
- 装置の変更時に再届出を怠る
- 風速不足など設計基準違反
こうしたミスは是正指導や改善命令の対象となるため注意が必要です。

「装置の変更」ってどの程度のことを指すの?

フードや開口部の大きさ、ダクトの長さや形状が変わったときなど、吸入風量が変化する可能性のある場合は、届出対象になるから、労基署に確認してみてね!
未届出のリスクと罰則
未届出で設置した場合、以下のようなリスクがあります:
- 労基署からの是正命令・使用停止
- 法令違反による企業名の公表
- 安全衛生法第120条に基づき6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金
また、労働災害が発生した場合の企業責任が重くなるリスクもあります。

届出を忘れていて、期日に遅れてしまったわ。
どのように対応すればいいかしら?

遅れてしまった場合は、「遅延理由書」に遅れた理由を記載して届出をするといいよ。通常は、窓口で口頭注意(次回からはお願いしますよ。のレベル)される程度がなので、遅れた場合も必ず届出するようにしようね!
まとめ|局所排気装置の届出は、安全管理のスタートライン
局所排気装置の設置や変更には、労働安全衛生法に基づく届出義務があります。これは単なる手続きではなく、職場で働く人の健康を守るための第一歩です。
以下のポイントを押さえておけば、対応はスムーズになります:
- 対象となる作業(有害物質を扱う工程)をしっかり確認する
- 届出のタイミング(設置の30日前)を守る
- 正しい書類と図面を整える
- 労働基準監督署への提出漏れがないようにする
届出を忘れてしまったり、書類の不備があったりすると、是正指導や罰則のリスクもあるため注意が必要です。とはいえ、手続きをきちんと踏めば難しい内容ではありません。
安全で快適な職場環境は、こうした小さな積み重ねから生まれます。「見えないリスク」を排除するために、届出の手続きは確実に、計画的に対応しましょう。